レッドソックスのクリス・セール選手が開幕から好調を維持している。
2桁奪三振を何試合も記録し、オールスター前に178奪三振を記録している。
ホワイトソックス時代も素晴らし投手であったが、今シーズンは一段上のレベルに到達している印象がある。
ではその要因は何なのか?
今回の記事ではデータを使ってセール選手の進化の要因を探ってみる。
空振り率の向上
ほぼ全ての指標が良化している今シーズン。
それを支えているのは空振り率の向上だ。
ボールゾーンの投球の内、スイングを誘いコンタクトされた割合を「O-Contact%」と呼ぶ。
またストライクゾーンの投球の内、スイングを誘いコンタクトされた割合を「Z-Contact%」と呼ぶ。
セール選手は昨シーズンから今シーズンにかけ、O-Contact%を65.4%→53.7%、Z-Contact%を83.2%→77.3%とともに向上させている。
この数値はともにセール選手の中で過去最高で、O-Contact%は全体10位、Z-Contact%は全体1位。
この2つの指標から、ボールゾーンでもストライクゾーンでも相手打者に簡単にコンタクトさせず、効率的にストライクを奪えていることが分かる。
ではこの2つが向上した要因は何か?
キーワードは「投球割合」と「球速の向上」。
投球割合の変化
セール選手の主な持ち球は、ストレート(4シーム)、スライダー、チェンジアップの3種類。
ストレートの割合が最も大きいのは例年と変わらないが、変わったのはその割合。
昨シーズンの59.2%から48.2%と10%も減らしている。
その減らした10%は、スライダーとチェンジアップを5%ずつ増やしている。
ストレートも強力な武器のセール選手だが、より強力なスライダーとチェンジアップの割合を増やしたのは非常に賢い判断だと言える。
球速の向上
ストレートの割合を減らしたセール選手だが、その球速はむしろ向上。
昨シーズンの92.8mphから94.2mphに向上させている。
このブログでよく使う、wXX/C(XXの球種でリーグ平均に比べて何点抑えているかを示す指標)を見ると、
昨シーズンから今シーズンを比較すると、wFB:0.7→1.95、wSL/C:0.97→1.19、wCH/C:1.73→1.82と全ての球種で向上している。
つまり、ストレートの球速を上げることでストレートだけでなく、スライダーとチェンジアップの威力も増していることが分かる。
まとめ
スライダーの印象が強いセール選手だが、今シーズンの飛躍はストレートの変化が要因であることが分かった。
素晴らしい成績を残しながら、BABIPやLOB%といった運の要素が強い指標が例年と変わらないセール選手。
怪我さえなければサイヤング賞は間違いなしで、現役最強左腕の座をカーショー選手と争うレベルに到達するだろう。
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